は斯くして、巴《ともえ》の如くに回転しつゝ、月から月へと進んで行つた。有意識か無意識か、巴《ともえ》の輪《わ》は回《めぐ》るに従つて次第に狭《せば》まつて来《き》た。遂《つい》に三巴《みつどもえ》が一所《いつしよ》に寄《よ》つて、丸い円にならうとする少し前の所で、忽然其一つが欠《か》けたため、残る二つは平衡を失なつた。
 代助と三千代は五年の昔《むかし》を心置なく語り始めた。語るに従つて、現在の自己が遠退いて、段々と当時の学生時代に返つて来《き》た。二人《ふたり》の距離は又|元《もと》の様に近くなつた。
「あの時|兄《にい》さんが亡《な》くならないで、未《ま》だ達者でゐたら、今頃《いまごろ》私《わたくし》は何《ど》うしてゐるでせう」と三千代は、其時を恋《こひ》しがる様に云つた。
「兄《にい》さんが達者でゐたら、別《べつ》の人《ひと》になつて居《ゐ》る訳ですか」
「別な人《ひと》にはなりませんわ。貴方《あなた》は?」
「僕も同じ事です」
 三千代は其時、少し窘《たしな》める様な調子で、
「あら嘘《うそ》」と云つた。代助は深《ふか》い眼《め》を三千代の上《うへ》に据ゑて、
「僕は、あの時も
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