》しいのを可愛《かあい》がつてゐた。国から連れて来《き》て、一所に家《うち》を持《も》つたのも、妹を教育しなければならないと云ふ義務の念からではなくて、全く妹の未来に対する情|合《あひ》と、現在自分の傍《そば》に引き着《つ》けて置きたい欲望とからであつた。彼《かれ》は三千代を呼ぶ前、既に代助に向つて其旨を打《う》ち明《あ》けた事があつた。其時代助は普通の青年の様に、多大の好奇心を以て此計画を迎へた。
三千代が来《き》てから後、兄《あに》と代助とは益|親《した》しくなつた。何方《どつち》が友情の歩を進めたかは、代助自身にも分《わか》らなかつた。兄《あに》が死んだ後《あと》で、当時を振り返つて見る毎に、代助は此《この》親密の裡《うち》に一種の意味を認めない訳に行かなかつた。兄《あに》は死ぬ時迄それを明言しなかつた。代助も敢て何事をも語らなかつた。斯《か》くして、相互の思《おも》はくは、相互の間の秘密として葬られて仕舞つた。兄《あに》は在生中に此意味を私《ひそか》に三千代に洩《も》らした事があるかどうか、其所《そこ》は代助も知らなかつた。代助はたゞ三千代の挙止動作と言語談話からある特別な感
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