。同じ家《いへ》に住む門野からも婆さんからも切り離された。二人《ふたり》は孤立の儘、白百合の香《か》の中《なか》に封じ込められた。
「先刻《さつき》表へ出《で》て、あの花を買つて来《き》ました」と代助は自分の周囲を顧《かへり》みた。三千代の眼《め》は代助に随《つ》いて室《へや》の中《なか》を一回《ひとまはり》した。其|後《あと》で三千代は鼻から強く息《いき》を吸《す》ひ込んだ。
「兄《にい》さんと貴方《あなた》と清水《しみづ》町にゐた時分の事を思ひ出《だ》さうと思つて、成るべく沢山買つて来《き》ました」と代助が云つた。
「好《い》い香《にほひ》ですこと」と三千代は翻《ひる》がへる様に綻《ほころ》びた大きな花瓣《はなびら》を眺《なが》めてゐたが、夫《それ》から眼《め》を放《はな》して代助に移した時、ぽうと頬《ほゝ》を薄赤くした。
「あの時分の事を考へると」と半分云つて已《や》めた。
「覚えてゐますか」
「覚えてゐますわ」
「貴方《あなた》は派手な半襟を掛《か》けて、銀杏返しに結つてゐましたね」
「だつて、東京へ来立《きたて》だつたんですもの。ぢき已《や》めて仕舞つたわ」
「此間《このあひ
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