へる程に強烈であつた。
代助は椅子の一つを指《ゆび》さした。三千代は命ぜられた通りに腰を掛けた。代助は其向《そのむかふ》に席を占《し》めた。二人《ふたり》は始めて相対した。然し良《やゝ》少時《しばら》くは二人《ふたり》とも、口《くち》を開《ひら》かなかつた。
「何《なに》か御用なの」と三千代は漸くにして問ふた。代助は、たゞ、
「えゝ」と云つた。二人《ふたり》は夫限《それぎり》で、又しばらく雨《あめ》の音《おと》を聴いた。
「何《なに》か急な御用なの」と三千代が又尋ねた。代助は又、
「えゝ」と云つた。双方共|何時《いつ》もの様に軽くは話し得なかつた。代助は酒の力を借りて、己れを語らなければならない様な自分を恥ぢた。彼は打ち明けるときは、必ず平生の自分でなければならないものと兼《かね》て覚悟をして居《ゐ》た。けれども、改たまつて、三千代に対して見ると、始《はじ》めて、一滴《いつてき》の酒精が恋《こひ》しくなつた。ひそかに次《つぎ》の間《ま》へ立《た》つて、例《いつも》のヰスキーを洋盃《コツプ》で傾《かたむ》け様かと思つたが、遂に其決心に堪えなかつた。彼は青天白日の下《もと》に、尋常の態度
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