もら》しながら、右《みぎ》の手を胸《むね》に当《あ》てた。

       十四の八

 三千代は玄関から、門野《かどの》に連《つ》れられて、廊下|伝《づた》ひに這入つて来《き》た。銘仙《めいせん》の紺絣《こんがすり》に、唐草《からくさ》模様の一重《ひとえ》帯を締《し》めて、此前とは丸で違《ちが》つた服装《なり》をしてゐるので、一目《ひとめ》見た代助には、新《あた》らしい感《かん》じがした。色《いろ》は不断の通り好《よ》くなかつたが、座敷の入口《いりぐち》で、代助と顔《かほ》を合《あは》せた時、眼《め》も眉《まゆ》も口《くち》もぴたりと活動を中止した様に固《かた》くなつた。敷居《しきゐ》に立《た》つてゐる間《あひだ》は、足《あし》も動《うご》けなくなつたとしか受取れなかつた。三千代は固《もと》より手紙を見た時から、何事をか予期して来《き》た。其予期のうちには恐れと、喜《よろこび》と、心配とがあつた。車から降《お》りて、座敷へ案内される迄、三千代の顔は其《その》予期の色をもつて漲《みなぎ》つてゐた。三千代の表情はそこで、はたと留《と》まつた。代助の様子は三千代に夫丈の打衝《シヨツク》を与
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