ん》立《た》たない内に、又手を鳴らして呼び出《だ》した。
「宅《うち》から使《つかひ》は来《き》やしなかつたかね」
「いゝえ」
 代助は、
「ぢや、宜《よろ》しい」と云つた限《ぎり》であつた。門野《かどの》は物足りなさうに入口《いりぐち》に立つてゐたが、
「先生は、何《なん》ですか、御宅《おたく》へ御出《おいで》になつたんぢや無《な》かつたんですか」
「何故《なぜ》」と代助は六《む》づかしい顔をした。
「だつて、御|出掛《でかけ》になるとき、そんな御話《おはなし》でしたから」
 代助は門野《かどの》を相手にするのが面倒になつた。
「宅《うち》へは行つたさ。――宅《うち》から使《つかひ》が来《こ》なければそれで、好《い》いぢやないか」
 門野《かどの》は不得《ふとく》要領に、
「はあ左様《さう》ですか」と云ひ放《はな》して出て行つた。代助は、父《ちゝ》があらゆる世界に対してよりも、自分に対して、性急であるといふ事を知つてゐるので、ことによると、帰つた後《あと》から直《すぐ》使《つかひ》でも寄《よ》こしはしまいかと恐れて聞《き》き糺《たゞ》したのであつた。門野が書生部屋へ引き取つたあとで、
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