」と仕舞に梅子が云つた。代助は固《もと》より嫂《あによめ》の言葉を側面《そくめん》へ摺《ず》らして受ける法をいくらでも心得てゐた。然るに、それを遣《や》るのが、軽薄の様で、又面倒な様で、今日《けふ》は厭《いや》になつた。却《かへ》つて真面目《まじめ》に、何処《どこ》が変《へん》か教へて呉れと頼《たの》んだ。梅子は代助の問《とひ》が馬鹿気てゐるので妙な顔をした。が、代助が益《ます/\》頼《たの》むので、では云つて上《あ》げませうと前置をして、代助の何《ど》うかしてゐる例を挙げ出した。梅子は勿論わざと真面目《まじめ》を装つてゐるものと代助を解釈した。其中《そのなか》に、
「だつて、兄《にい》さんが留守勝《るすがち》で、嘸御|淋《さむ》しいでせうなんて、あんまり思遣《おもひや》りが好過《よす》ぎる事を仰《おつ》しやるからさ」と云ふ言葉があつた。代助は其所《そこ》へ自分を挟《はさ》んだ。
「いや、僕の知つた女《をんな》に、左様《さう》云ふのが一人《ひとり》あつて、実《じつ》は甚だ気の毒だから、つい他《ほか》の女《をんな》の心持《こゝろもち》も聞《き》いて見たくなつて、伺《うかゞ》つたんで、決し
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