とりごと》の様に云つたが、別に梅子の返事を予期する気もなかつたので、代助は向《むかふ》の顔《かほ》も見ず、たゞ畳の上《うへ》に置いてある新聞《しんぶん》に眼《め》を落《おと》した。すると梅子は忽ち、
「何《なん》ですつて」と切《き》り込む様に云つた。代助の眼《め》が、其調子に驚ろいて、ふと自分の方に視線を移した時、
「だから、貴方《あなた》が奥さんを御貰《おもら》ひなすつたら、始終|宅《うち》に許《ばかり》ゐて、たんと可愛《かあい》がつて御上《おあ》げなさいな」と云つた。代助は始めて相手が梅子であつて、自分が平生の代助でなかつた事を自覚した。それで成るべく不断《ふだん》の調子を出《だ》さうと力《つと》めた。
十四の三
けれども、代助の精神は、結婚謝絶と、其謝絶に次《つ》いで起るべき、三千代と自分の関係にばかり注《そゝ》がれてゐた。従つて、いくら平生の自分に帰つて、梅子の相手になる積でも、梅子の予期してゐない、変つた音色《ねいろ》が、時々《とき/″\》会話の中《なか》に、思はず知らず出《で》て来《き》た。
「代さん、貴方《あなた》今日《けふ》は何《ど》うかしてゐるのね
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