る前に、一応代助の様子を、試験官の眼《め》で見た。
「代さん、少し瘠《や》せた様ぢやありませんか」と云つた。代助は又|頬《ほゝ》を撫《な》でて、
「そんな事も無《な》いだらう」と打ち消した。
「だつて、色沢《いろつや》が悪《わる》いのよ」と梅子は眼《め》を寄《よ》せて代助の顔《かほ》を覗《のぞ》き込《こ》んだ。
「庭《には》の所為《せゐ》だ。青葉《あをば》が映《うつ》るんだ」と庭《には》の植込《うゑごみ》の方を見たが、「だから貴方《あなた》だつて、矢《や》っ張《ぱ》り蒼《あを》いですよ」と続《つゞ》けた。
「私《わたし》、此二三|日《にち》具合が好《よ》くないんですもの」
「道理《どうり》でぽかんとして居《ゐ》ると思《おも》つた。何《ど》うかしたんですか。風邪《かぜ》ですか」
「何《なん》だか知らないけれど生欠許《なまあくびばか》り出《で》て」
梅子は斯《か》う答へて、すぐ新聞を膝《ひざ》から卸《おろ》すと、手を鳴らして、小間使《こまづかひ》を呼んだ。代助は再び父《ちゝ》の在《ざい》、不在《ふざい》を確《たしか》めた。梅子は其|問《とひ》をもう忘れてゐた。聞いて見ると、玄関にあつた車
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