浴《あび》せかけねば已《や》まぬ必然の勢力が来るに違ないと考へると、其所《そこ》に至つて、又恐ろしくなつた。
代助は父《ちゝ》からの催促を心待に待つてゐた。しかし父《ちゝ》からは何の便《たより》もなかつた。三千代にもう一遍逢はうかと思つた。けれども、それ程の勇気も出《で》なかつた。
一番仕舞に、結婚は道徳の形式に於て、自分と三千代を遮断するが、道徳の内容に於て、何等の影響を二人《ふたり》の上《うへ》に及ぼしさうもないと云ふ考が、段々代助の脳裏に勢力を得て来《き》た。既に平岡に嫁《とつ》いだ三千代に対して、こんな関係が起り得るならば、此上《このうへ》自分に既婚者の資格を与へたからと云つて、同様の関係が続《つゞ》かない訳には行かない。それを続《つゞ》かないと見るのはたゞ表向の沙汰で、心を束縛《そくばく》する事の出来《でき》ない形式は、いくら重《かさ》ねても苦痛を増す許である。と云ふのが代助の論法であつた。代助は縁談を断るより外に道《みち》はなくなつた。
十四の二
斯《か》う決心した翌日《よくじつ》、代助は久し振《ぶ》りに髪《かみ》を刈《か》つて髯《ひげ》を剃《そ》つ
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