風呂場に行くたびに、長《なが》い間《あひだ》鏡《かゞみ》を見た。髯《ひげ》の濃《こ》い男なので、少《すこ》し延びると、自分には大層見苦しく見えた。触《さわ》つて、ざら/\すると猶不愉快だつた。
飯《めし》は依然として、普通の如く食《く》つた。けれども運動の不足と、睡眠の不規則と、それから、脳の屈托とで、排泄機能に変化を起した。然し代助はそれを何とも思はなかつた。生理状態は殆んど苦にする暇《いとま》のない位、一つ事をぐる/\回《まは》つて考へた。それが習慣になると、終局なく、ぐる/\回《まは》つてゐる方が、埒《らつ》の外《そと》へ飛び出《だ》す努力よりも却つて楽になつた。
代助は最後に不決断の自己|嫌悪《けんお》に陥つた。已を得ないから、三千代と自分の関係を発展させる手段として、佐川の縁談を断らうかと迄考へて、覚えず驚ろいた。然し三千代と自分の関係を絶つ手段として、結婚を許諾して見様かといふ気は、ぐる/\回転してゐるうちに一度も出《で》て来《こ》なかつた。
縁談を断《ことわ》る方は単独にも何遍となく決定が出来た。たゞ断つた後《あと》、其反動として、自分をまともに三千代の上《うへ》に
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