庭を重《おも》く見るのは、君《きみ》の様な独身|者《もの》に限《かぎ》る様だね」と云つた。
十三の八
此|言葉《ことば》を聞《き》いたとき、代助は平岡が悪《にく》くなつた。あからさまに自分の腹《はら》の中《なか》を云ふと、そんなに家庭が嫌《きらひ》なら、嫌《きらひ》でよし、其代り細君を奪《と》つちまふぞと判然《はつきり》知らせたかつた。けれども二人《ふたり》の問答は、其所《そこ》迄|行《ゆ》くには、まだ中中《なかなか》間《あひだ》があつた。代助はもう一遍|外《ほか》の方面から平岡の内部に触れて見た。
「君《きみ》が東京へ着《き》たてに、僕は君から説教されたね。何《なに》か遣《や》れつて」
「うん。さうして君の消極な哲学を聞《き》かされて驚ろいた」
代助は実際平岡が驚ろいたらうと思つた。その時の平岡は、熱病に罹《かゝ》つた人間《にんげん》の如く行為《アクシヨン》に渇《かは》いてゐた。彼は行為《アクシヨン》の結果として、富を冀つてゐたか、もしくは名誉、もしくは権勢を冀つてゐたか。夫《それ》でなければ、活動としての行為《アクシヨン》其物を求めてゐたか。それは代助にも分《
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