も、寧ろ情の旋風《つむじ》に捲《ま》き込《こ》まれた冒険の働《はたら》きであつた。其所《そこ》に平生の代助と異なる点があらはれてゐた。けれども、代助自身は夫《それ》に気が付いてゐなかつた。一時間の後《のち》彼《かれ》は又編輯室の入口《いりぐち》に立つた。さうして、平岡と一所に新聞社の門を出た。

       十三の六

 裏通りを三四丁|来《き》た所で、平岡が先《さき》へ立つて或家《あるいへ》に這入《はい》つた。座敷《ざしき》の軒《のき》に釣忍《つりしのぶ》が懸《かゝ》つて、狭《せま》い庭《には》が水で一面に濡《ぬ》れてゐた。平岡は上衣《うはぎ》を脱《ぬ》いで、すぐ胡坐《あぐら》をかいた。代助は左程|暑《あつ》いとも思はなかつた。団扇は手にした丈で済《す》んだ。
 会話は新聞社内の有様《ありさま》から始まつた。平岡は忙《いそが》しい様で却つて楽《らく》な商買で好《い》いと云つた。其語気には別に負惜《まけおし》みの様子も見えなかつた。代助は、それは無責任だからだらうと調戯《からか》つた。平岡は真面目になつて、弁解をした。さうして、今日《こんにち》の新聞事業程競争の烈しくて、機敏な頭《あ
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