のは情《なさけ》ないからだと答へた。此女は愛を専《もつぱ》らにする時機が余り短か過《す》ぎて、親子《おやこ》の関係が容赦もなく、若い頭《あたま》の上《うへ》を襲つて来《き》たのに、一種の無定を感じたのであつた。それは無論|堅気《かたぎ》の女ではなかつた。代助は肉の美《び》と、霊《れい》の愛にのみ己《おの》れを捧げて、其他を顧みぬ女の心理状体として、此話を甚だ興味あるものと思つた。
十三の三
翌日《よくじつ》になつて、代助はとう/\又三千代に逢《あ》ひに行つた。其時|彼《かれ》は腹《はら》の中《なか》で、先達《せんだつ》て置《お》いて来《き》た金《かね》の事を、三千代が平岡に話したらうか、話《はな》さなかつたらうか、もし話《はな》したとすれば何《ど》んな結果を夫婦の上《うへ》に生じたらうか、それが気掛《きがゝ》りだからと云ふ口実を拵《こし》らえた。彼は此|気掛《きがゝり》が、自分を駆《か》つて、凝《じつ》と落ち付《つ》かれない様に、東西に引張回《ひつぱりまは》した揚句、遂《つい》に三千代の方に吹《ふ》き付《つ》けるのだと解釈した。
代助は家《いへ》を出《で》る前《ま
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