へ》に、昨夕《ゆふべ》着《き》た肌着《はだぎ》も単衣《ひとへ》も悉く改《あらた》めて気《き》を新《あらた》にした。外《そと》は寒暖計の度盛《どもり》の日を逐《お》ふて騰《あが》る頃《ころ》であつた。歩《ある》いてゐると、湿《しめ》つぽい梅雨《つゆ》が却つて待ち遠《とほ》しい程|熾《さか》んに日《ひ》が照《て》つた。代助は昨夕《ゆふべ》の反動で、此陽気な空気の中《なか》に落《お》ちる自分の黒《くろ》い影《かげ》が苦《く》になつた。広《ひろ》い鍔《つば》の夏帽《なつぼう》を被《かぶ》りながら、早く雨季《うき》に入れば好《い》いと云ふ心持があつた。其|雨季《うき》はもう二三|日《にち》の眼前《がんぜん》に逼《せま》つてゐた。彼《かれ》の頭《あたま》はそれを予報するかの様に、どんよりと重《おも》かつた。
平岡の家《うち》の前《まへ》へ来《き》た時は、曇《くも》つた頭《あたま》を厚《あつ》く掩ふ髪《かみ》の根元《ねもと》が息切《いき》れてゐた。代助は家《いへ》に入る前《まへ》に先《ま》づ帽子を脱《ぬ》いだ。格子には締《しま》りがしてあつた。物音《ものおと》を目的《めあて》に裏《うら》へ回《まは
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