分の寿命を極《き》める権利を持たぬ如く、自分の未来をも極め得なかつた。同時に、自分の寿命に、大抵の見当を付《つ》け得る如く、自分の未来にも多少の影《かげ》を認めた。さうして、徒らに其影を捕捉しやうと企てた。

       十三の二

 其時代助の脳の活動は、夕闇《ゆふやみ》を驚ろかす蝙蝠《かはほり》の様な幻像をちらり/\と産《う》み出《だ》すに過《す》ぎなかつた。其|羽搏《はばたき》の光《ひかり》を追《お》ひ掛《か》けて寐《ね》てゐるうちに、頭《あたま》が床《ゆか》から浮《う》き上《あ》がつて、ふわ/\する様に思はれて来《き》た。さうして、何時《いつ》の間《ま》にか軽《かる》い眠《ねむり》に陥《おちい》つた。
 すると突然|誰《だれ》か耳《みゝ》の傍《はた》で半鐘を打つた。代助は火事と云ふ意識さへまだ起《おこ》らない先《さき》に眼《め》を醒《さ》ました。けれども跳《は》ね起《お》きもせずに寐《ね》てゐた。彼《かれ》の夢《ゆめ》に斯《こ》んな音《おと》の出《で》るのは殆んど普通であつた。ある時《とき》はそれが正気に返つた後《あと》迄も響《ひゞ》いてゐた。五六日|前《まへ》彼《かれ》は、
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