彼《かれ》の家《いへ》の大いに揺《ゆ》れる自覚と共に眠《ねむり》を破《やぶ》つた。其|時《とき》彼《かれ》は明《あき》らかに、彼《かれ》の下《した》に動《うご》く畳《たゝみ》の様《さま》を、肩《かた》と腰《こし》と脊《せ》の一部に感《かん》じた。彼は又|夢《ゆめ》に得た心臓の鼓動を、覚《さ》めた後《あと》迄|持《も》ち伝《つた》へる事が屡あつた。そんな場合には聖徒《セイント》の如く、胸《むね》に手を当《あ》てゝ、眼《め》を開《あ》けた儘《まゝ》、じつと天井を見詰めてゐた。
 代助は此時も半鐘の音《おと》が、じいんと耳《みゝ》の底《そこ》で鳴り尽《つく》して仕舞ふ迄|横《よこ》になつて待《ま》つてゐた。それから起《お》きた。茶《ちや》の間《ま》へ来《き》て見ると、自分の膳《ぜん》の上《うへ》に簀垂《すだれ》が掛《か》けて、火鉢の傍《そば》に据ゑてあつた。柱時計はもう十二時|回《まは》つてゐた。婆《ばあ》さんは、飯《めし》を済《す》ました後《あと》と見《み》えて、下女部屋で御|櫃《はち》の上《うへ》に肱《ひぢ》を突《つ》いて居眠《ゐねむ》りをしてゐた。門野《かどの》は何処《どこ》へ行《い》
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