野《かどの》は一寸《ちよつと》其様子を覗《のぞ》きに来《き》たが、代助の平生を知つてゐるので、言葉も掛けず、椅子に引《ひ》つ掛《か》けてある羽織丈を抱《かゝ》へて出《で》て行つた。
 代助は寐《ね》ながら、自分の近き未来を何《ど》うなるものだらうと考へた。斯《か》うして打遣《うちや》つて置けば、是非共|嫁《よめ》を貰《もら》はなければならなくなる。嫁《よめ》はもう今迄《いままで》に大分《だいぶ》断《ことわ》つてゐる。此上|断《ことわ》れば、愛想を尽《つ》かされるか、本当に怒《おこ》り出《だ》されるか、何方《どつち》かになるらしい。もし愛想を尽《つ》かされて、結婚勧誘をこれ限《かぎ》り断念して貰《もら》へれば、それに越した事はないが、怒《おこ》られるのは甚だ迷惑である。と云つて、進まぬものを貰《もら》ひませうと云ふのは今代人《こんだいじん》として馬鹿気てゐる。代助は此《この》ヂレンマの間《あひだ》に※[#「彳+詆のつくり」、第3水準1−84−31]徊した。
 彼は父と違《ちが》つて、当初からある計画を拵らえて、自然を其計画通りに強ひる古風な人《ひと》ではなかつた。彼は自然を以て人間の拵《
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