《ひ》いた様な気がした。待合所《まちあひじよ》に這入《はい》るや否や、梅子から顔色《かほいろ》が可《よ》くないと云ふ注意を受けた。代助は何《なん》にも答へずに、帽子を脱《ぬ》いで、時々《とき/″\》濡《ぬ》れた頭《あたま》を抑えた。仕舞には朝《あさ》奇麗《きれい》に分《わ》けた髪《かみ》がもぢや/\になつた。
 プラツトフオームで高木は突然代助に向つて、
「何《ど》うです此汽車で、神戸迄遊びに行きませんか」と勧めた。代助はたゞ難有うと答へた丈であつた。愈《いよ/\》汽車の出《で》る間際《まぎは》に、梅子はわざと、窓際《まどぎは》に近寄《ちかよ》つて、とくに令嬢の名を呼んで、
「近《ちか》い内《うち》に又是非入らつしやい」と云つた。令嬢は窓《まど》のなかで、叮嚀に会釈したが、窓の外《そと》へは別段の言葉も聞《きこ》えなかつた。汽車を見送つて、又改札場を出た四人《よつた》りは、それぎり離れ/″\になつた。梅子は代助を誘つて青山へ連れて行かうとしたが、代助は頭《あたま》を抑えて応じなかつた。
 車《くるま》に乗つてすぐ牛込へ帰《かへ》つて、それなり書斎へ這入つて、仰向《あほむけ》に倒れた。門
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