た。
代助は婆さんを呼《よ》んで着物《きもの》を出《だ》さした。面倒だと思つたが、敬意を表するために、紋付《もんつき》の夏羽織を着《き》た。袴は一重のがなかつたから、家《うち》へ行《い》つて、父《ちゝ》か兄《あに》かのを穿《は》く事に極《き》めた。代助は神経質な割《わり》に、子供の時からの習慣で、人中《ひとなか》へ出《で》るのを余り苦《く》にしなかつた。宴会とか、招待とか、送別とかいふ機会があると、大抵は都合して出席した。だから、ある方面に知名な人の顔は大分覚えてゐた。其|中《なか》には伯爵とか子爵とかいふ貴公子も交《まじ》つてゐた。彼は斯《こ》んな人《ひと》の仲間入《なかまいり》をして、其|仲間《なかま》なりの交際《つきあひ》に、損も得《とく》も感じなかつた。言語《げんご》動作は何処《どこ》へ出《で》ても同じであつた。外部《ぐわいぶ》から見ると、其所《そこ》が大変能く兄《あに》の誠吾に似てゐた。だから、よく知《し》らない人は、此兄弟の性質を、全く同一型に属するものと信じてゐた。
代助が青山に着《つ》いた時は、十一時五分前であつたが、御客はまだ来《き》てゐなかつた。兄《あに》もまだ
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