き》て、叔父《おぢ》さんは明日《あした》から旅行するつて云ふ話《はなし》だから、出《で》て来《き》た」
「えゝ、実《じつ》は今朝《けさ》六時|頃《ごろ》から出《で》やうと思つてね」と代助は嘘《うそ》の様な事を、至極冷静に答《こた》へた。兄《あに》も真面目な顔をして、
「六時に立てる位な早起《はやおき》の男なら、今|時分《じぶん》わざわざ青山《あをやま》から遣《や》つて来《き》やしない」と云つた。改めて用事を聞いて見ると、矢張り予想の通《とほ》り肉薄《にくはく》の遂行に過ぎなかつた。即ち今日《けふ》高木と佐川の娘を呼んで午餐を振舞《ふるま》ふ筈だから、代助にも列席しろと云ふ父《ちゝ》の命令であつた。兄《あに》の語《かた》る所によると、昨夕《ゆふべ》誠太郎の返事を聞いて、父《ちゝ》は大いに機嫌を悪くした。梅子は気を揉《も》んで、代助の立《た》たない前に逢《あ》つて、旅行を延《の》ばさせると云ひ出《だ》した。兄《あに》はそれを留《と》めたさうである。
「なに彼奴《あいつ》が今夜中《こんやぢう》に立《た》つものか、今頃《いまごろ》は革鞄《かばん》の前へ坐《すは》つて考へ込んでゐる位《ぐらゐ》の
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