迄出て行《い》つたが、沓脱《くつぬぎ》へ下《お》りながら振り返つて、突然
「何処《どこ》へ入らつしやるの」と代助を見上《みあ》げた。代助は、
「何処《どこ》つて、まだ分《わか》るもんか。ぐる/\回《まは》るんだ」と云つたので、誠太郎は又にや/\しながら、格子を出た。
十二の二
代助は其夜《そのよ》すぐ立《た》たうと思つて、グラツドストーンの中《なか》を門野《かどの》に掃|除《じ》さして、携帯品を少《すこ》し詰《つ》め込《こ》んだ。門野《かどの》は少《すく》なからざる好奇心を以て、代助の革鞄《かばん》を眺《なが》めてゐたが、
「少《すこ》し手伝《てつだ》ひませうか」と突立つたまゝ聞いた。代助は、
「なに、訳《わけ》はない」と断わりながら、一旦|詰《つ》め込んだ香水の壜《びん》を取《と》り出《だ》して、封被《ふうひ》を剥《は》いで、栓《せん》を抜《ぬ》いて、鼻《はな》に当《あ》てゝ嗅《か》いで見た。門野は少《すこ》し愛想を尽《つか》した様な具合で、自分の部屋へ引き取つた。二三|分《ぷん》すると又|出《で》て来《き》て、
「先生、車《くるま》を左様《さう》云つときますかな
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