ものを纏めて見《み》ると、人《ひと》の恐《おそ》ろしがるもの許《ばかり》であつた。仕舞には、斯様《かやう》に考へなければならない自分が怖《こわ》くなつた。代助は蒼白《あをしろ》く見える自分の脳髄を、ミルクセークの如く廻転させる為《ため》に、しばらく旅行しやうと決心した。始めは父《ちゝ》の別荘に行く積《つもり》であつた。然し、是は東京から襲はれる点に於て、牛込に居ると大《たい》した変りはないと思つた。代助は旅行案内を買つて来《き》て、自分の行《い》くべき先《さき》を調《しら》べて見た。が、自分の行くべき先《さき》は天下中《てんかぢう》何処《どこ》にも無《な》い様な気がした。しかし、代助は無理にも何処《どこ》かへ行《い》かうとした。それには、支度を調《とゝの》へるに若《し》くはないと極めた。代助は電車に乗つて、銀座《ぎんざ》迄|来《き》た。朗《ほがら》かに風《かぜ》の往来を渡《わた》る午後であつた。新橋の勧工|場《ば》を一回《ひとまはり》して、広い通りをぶら/\と京橋の方へ下《くだ》つた。其時《そのとき》代助の眼《め》には、向ふ側《がは》の家《いへ》が、芝居の書割《かきわり》の様に平《ひら
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