さうして、あらゆる美《び》の種類に接触する機会を得るのが、都会人士の権能であると考へた。あらゆる美《び》の種類に接触して、其たび毎《ごと》に、甲から乙に気を移し、乙から丙に心を動《うご》かさぬものは、感受性に乏しい無鑑賞|家《か》であると断定した。彼《かれ》は是《これ》を自家の経験に徴《ちよう》して争ふべからざる真理と信じた。その真理から出立して、都会的生活を送る凡ての男女は、両性間の引力《アツトラクシヨン》に於て、悉く随縁臨機《ずいえんりんき》に、測りがたき変化を受《う》けつゝあるとの結論に到着した。それを引き延《の》ばすと、既婚《きこん》の一対《いつつい》は、双方ともに、流俗に所謂《いはゆる》不義《インフイデリチ》の念に冒《おか》されて、過去から生じた不幸を、始終|嘗《な》めなければならない事になつた。代助は、感受性の尤も発達した、又接触点の尤も自由な、都会人士の代表者として、芸妓を撰んだ。彼等のあるものは、生涯に情夫を何人取り替《か》えるか分《わか》らないではないか。普通の都会人は、より少《すく》なき程度に於て、みんな芸妓ではないか。代助は渝《かは》らざる愛を、今《いま》の世に口
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