て行《い》つた。四時頃用が済《す》んだら芝居の方へ回る約束なんださうである。それ迄自分と縫子丈で見てゐたら好《よ》ささうなものだが、梅子は夫《それ》が厭《いや》だと云つた。そんなら直木を連れて行《い》けと兄《あに》から注意された時、直木は紺絣《こんがすり》を着《き》て、袴《はかま》を穿《は》いて、六づかしく坐《すは》つてゐて不可《いけ》ないと答へた。夫《それ》で仕方がないから代助を迎ひに遣《や》つたのだ、と、是は兄《あに》が出掛《でがけ》の説明であつた。代助は少々理窟に合はないと思つたが、たゞ、左様《さう》ですかと答へた。さうして、嫂《あによめ》は幕《まく》の相間《あひま》に話《はな》し相手が欲《ほし》いのと、夫《それ》からいざと云ふ時《とき》に、色々《いろ/\》用を云ひ付けたいものだから、わざ/\自分を呼び寄《よ》せたに違ないと解釈した。
梅子と縫子は長い時間を御|化《け》粧に費やした。代助は懇よく御化粧の監督者になつて、両人《ふたり》の傍《そば》に附《つ》いてゐた。さうして時々は、面白|半分《はんぶん》の冷《ひや》かしも云つた。縫子からは叔父《おぢ》さん随分だわを二三度繰り返《か
前へ
次へ
全490ページ中266ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング