、御迎《おむかへ》つて何《なん》だい」と聞《き》くと、勝《かつ》は恐縮の態度で、
「奥様が車《くるま》を持《も》つて、迎《むかひ》に行《い》つて来《こ》いつて、御仰《おつしや》いました」
「何《なに》か急用でも出来《でき》たのかい」
勝《かつ》は固《もと》より何事《なにごと》も知らなかつた。
「御出《おいで》になれば分《わか》るからつて――」と簡潔に答へて、言葉《ことば》の尻を結《むす》ばなかつた。
代助は奥へ這入《はい》つた。婆《ばあ》さんを呼んで着物《きもの》を出させやうと思つたが、腹の痛むものを使《つか》ふのが厭《いや》なので、自分で簟笥の抽出《ひきだし》を掻《か》き回《まは》して、急いで身支度《みじたく》をして、勝《かつ》の車《くるま》に乗つて出《で》た。
其日《そのひ》は風《かぜ》が強く吹《ふ》いた。勝《かつ》は苦《くる》しさうに、前《まへ》の方《ほう》に曲《こゞ》んで馳《か》けた。乗《の》つてゐた代助は、二重の頭《あたま》がぐる/\回転するほど、風《かぜ》に吹かれた。けれども、音《おと》も響《ひゞき》もない車輪《しやりん》が美くしく動《うご》いて、意識に乏しい自分を、
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