《はた》らいちや悪《わる》いだらう。先生の膳は僕が洗つて置くから、彼方《あつち》へ行《い》つて休《やす》んで御出《おいで》」と婆《ばあ》さんを労《いたは》つてゐた。代助は始めて婆《ばあ》さんの病気の事を思ひ出《だ》した。何《なに》か優《やさ》しい言葉でも掛ける所であつたが、面倒だと思つて已《や》めにした。
食刀《ナイフ》を置《お》くや否や、代助はすぐ紅茶々碗を持《も》つて書斎へ這入《はい》つた。時計を見るともう九時|過《すぎ》であつた。しばらく、庭《には》を眺《なが》めながら、茶を啜《すゝ》り延《の》ばしてゐると、門野《かどの》が来《き》て、
「御|宅《たく》から御迎《おむかひ》が参りました」と云つた。代助は宅《うち》から迎《むかひ》を受ける覚《おぼえ》がなかつた。聞き返《かへ》して見ても、門野《かどの》は車夫《しやふ》がとか何とか要領を得ない事を云ふので、代助は頭《あたま》を振り/\玄関へ出《で》て見た。すると、そこに兄《あに》の車《くるま》を引《ひ》く勝《かつ》と云ふのがゐた。ちやんと、護謨《ごむ》輪の車《くるま》を玄関へ横付《よこづけ》にして、叮嚀に御辞義をした。
「勝《かつ》
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