たゝ》きながら考へた。幸《さいはひ》に、代助はいくら頭《あたま》が二重《にぢう》になつても、脳の活動に狂《くるひ》を受けた事がなかつた。時としては、たゞ頭《あたま》を使《つか》ふのが臆劫になつた。けれども努力さへすれば、充分複雑な仕事に堪えるといふ自信があつた。だから、斯《こ》んな異状を感じても、脳の組織の変化から、精神に悪《わる》い影響を与へるものとしては、悲観する余地がなかつた。始めて、こんな感覚があつた時は驚ろいた。二遍目は寧ろ新奇な経験として喜《よろこ》んだ。この頃《ごろ》は、此経験が、多くの場合に、精神気力の低落《ていらく》に伴《ともな》ふ様になつた。内容の充実しない行為を敢てして、生活する時の徴候になつた。代助にはそこが不愉快だつた。
床《とこ》の上《うへ》に起《お》き上《あ》がつて、彼は又|頭《あたま》を振《ふ》つた。朝食《あさめし》の時、門野《かどの》は今朝《けさ》の新聞に出てゐた蛇《へび》と鷲《わし》の戦《たゝかひ》の事を話《はな》し掛けたが、代助は応じなかつた。門野は又|始《はじ》まつたなと思つて、茶の間《ま》を出《で》た。勝手の方で、
「小母《をば》さん、さう働
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