のは斯《か》う云ふ時であつた。彼は今迄何遍も此大問題を捕《とら》へて、彼《かれ》の眼前《がんぜん》に据ゑ付けて見た。其|動機《どうき》は、単《たん》に哲学上の好奇心から来《き》た事《こと》もあるし、又|世間《せけん》の現象が、余《あま》りに複雑《ふくざつ》な色彩《しきさい》を以て、彼《かれ》の頭《あたま》を染め付《つ》けやうと焦《あせ》るから来《く》る事もあるし、又最後には今日《こんにち》の如くアンニユイの結果として来《く》る事もあるが、其|都度《つど》彼は同じ結論に到着した。然し其結論は、此問題の解決ではなくつて、寧ろ其否定と異ならなかつた。彼の考によると、人間はある目的を以て、生れたものではなかつた。之《これ》と反対に、生《うま》れた人間《にんげん》に、始めてある目的が出来《でき》て来《く》るのであつた。最初から客観的にある目的を拵《こし》らえて、それを人間《にんげん》に附着するのは、其|人間《にんげん》の自由な活動を、既に生れる時に奪つたと同じ事になる。だから人間《にんげん》の目的は、生れた本人が、本人自身に作つたものでなければならない。けれども、如何な本人でも、之を随意に作る事
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