で》た。
「はあ、左様《さう》ですか。上《あ》がるんですか」と茶壺《ちやつぼ》を放り出《だ》して門野も付《つ》いて来《き》た。二人《ふたり》で洋盃《コツプ》を探《さが》したが一寸《ちよつと》見付《みつ》からなかつた。婆さんはと聞くと、今御客さんの菓子を買ひに行つたといふ答であつた。
「菓子がなければ、早く買つて置《お》けば可《い》いのに」と代助は水道の栓《せん》を捩《ねぢ》つて湯呑に水を溢《あふ》らせながら云つた。
「つい、小母《をば》さんに、御客さんの呉《く》る事を云つて置かなかつたものですからな」と門野《かどの》は気の毒さうに頭《あたま》を掻《か》いた。
「ぢや、君が菓子を買《かひ》に行《い》けば可《い》いのに」と代助は勝手《かつて》を出《で》ながら、門野《かどの》に当《あた》つた。門野《かどの》はそれでも、まだ、返事をした。
「なに菓子の外《ほか》にも、まだ色々《いろ/\》買《かひ》物があるつて云ふもんですからな。足《あし》は悪《わる》し天気は好《よ》くないし、廃《よ》せば好《い》いんですのに」
代助は振《ふ》り向きもせず、書斎へ戻《もど》つた。敷居《しきゐ》を跨いで、中《なか
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