てゐる所から、水《みづ》を棄《す》てやうとすると、障子の外《そと》に硝子戸《がらすど》が一枚邪魔をしてゐる。門野《かどの》は毎朝椽側の硝子戸《がらすど》を一二枚宛|開《あ》けないで、元《もと》の通《とほ》りに放《ほう》つて置く癖《くせ》があつた。代助は席《せき》を立《た》つて、椽へ出《で》て、水《みづ》を庭《には》へ空《あ》けながら、門野《かどの》を呼《よ》んだ。今ゐた門《かど》野は何処《どこ》へ行つたか、容易に返事をしなかつた。代助は少《すこ》しまごついて、又|三千代《みちよ》の所《ところ》へ帰つて来《き》て、
「今《いま》すぐ持《も》つて来《き》て上《あ》げる」と云ひながら、折角|空《あ》けた洋盃《コツプ》を其儘|洋卓《テーブル》の上に置《お》いたなり、勝手の方へ出《で》て行つた。茶《ちや》の間《ま》を通ると、門野《かどの》は無細工な手をして錫《すゞ》の茶壺《ちやつぼ》から玉露を撮《つま》み出《だ》してゐた。代助の姿《すがた》を見て、
「先生、今|直《ぢき》です」と言訳《いひわけ》をした。
「茶は後《あと》でも好《い》い。水《みづ》が要《い》るんだ」と云つて、代助は自分で台所へ出《
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