衣《ひとへ》の下《した》に襦袢を重《かさ》ねて、手《て》に大きな白い百合《ゆり》の花《はな》を三本|許《ばかり》提《さ》げてゐた。其百合《そのゆり》をいきなり洋卓《テーブル》の上《うへ》に投《な》げる様に置《お》いて、其|横《よこ》にある椅子《いす》へ腰《こし》を卸《おろ》した。さうして、結《ゆ》つた許《ばかり》の銀杏|返《がへし》を、構《かま》はず、椅子《いす》の脊《せ》に押《お》し付《つ》けて、
「あゝ苦《くる》しかつた」と云ひながら、代助の方を見て笑《わら》つた。代助は手を叩《たゝ》いて水《みづ》を取り寄《よ》せ様とした。三千代は黙《だま》つて洋卓《テーブル》の上《うへ》を指《さ》した。其所《そこ》には代助の食後《しよくご》の嗽《うがひ》をする硝子《がらす》の洋盃《コツプ》があつた。中《なか》に水《みづ》が二口許《ふたくちばかり》残つてゐた。
「奇麗なんでせう」と三千代が聞《き》いた。
「此奴《こいつ》は先刻《さつき》僕《ぼく》が飲んだんだから」と云つて、洋盃《コツプ》を取《と》り上《あ》げたが、※[#「足へん+厨」、第3水準1−92−39]躇《ちうちよ》した。代助の坐《すは》つ
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