の入口《いりぐち》にあらはれた時、血色《けつしよく》のいゝ代助の頬《ほゝ》は微《かす》かに光沢《つや》を失《うしな》つてゐた。門野《かどの》は、
「此方《こつち》にしますか」と甚だ簡単に代助の意向を確《たしか》めた。座敷《ざしき》へ案内するか、書斎で逢ふかと聞くのが面倒だから、斯《か》う詰《つ》めて仕舞つたのである。代助はうんと云つて、入口《いりぐち》に返事を待《ま》つてゐた門野《かどの》を追ひ払《はら》ふ様に、自分で立《た》つて行《い》つて、椽側へ首《くび》を出《だ》した。三千代は椽側と玄関《げんくわん》の継目《つぎめ》の所に、此方《こちら》を向《む》いてためらつて居《ゐ》た。

       十の四

 三千代の顔《かほ》は此前《このまへ》逢《あ》つた時《とき》よりは寧ろ蒼白《あをしろ》かつた。代助に眼《め》と顎《あご》で招《まね》かれて書斎の入口《いりぐち》へ近寄《ちかよ》つた時、代助は三千代の息《いき》を喘《はづ》ましてゐることに気が付いた。
「何《ど》うかしましたか」と聞《き》いた。
 三千代は何《なに》にも答へずに室《へや》の中《なか》に這入《はいつ》て来《き》た。セルの単
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