が》談義のうちに、代助は二三の新《あたら》しい点も認《みと》めた。その一つは、御前は一体是からさき何《ど》うする料簡なんだと云ふ真面目な質問であつた。代助は今迄|父《ちゝ》からの注文ばかり受けてゐた。だから、其注文を曖昧に外《はづ》す事に慣《な》れてゐた。けれども、斯う云ふ大質問になると、さう口《くち》から出任《でまか》せに答へられない。無暗な事を云へば、すぐ父《ちゝ》を怒《おこ》らして仕舞ふからである。と云つて正直を自白すると、二三年間|父《ちゝ》の頭《あたま》を教育した上《うへ》でなくつては、通じない理窟になる。何故《なぜ》と云ふと、代助は今此大質問に応じて、自分の未来を明瞭に道破《いひやぶ》る丈の考も何も有つてゐなかつたからである。彼はそれが自分に取つては尤もな所だと思つてゐた。から、父《ちゝ》が、其通りを聞《き》いて、成程と納得する迄には、大変な時間がかゝる。或は生涯|通《つう》じつこないかも知れない。父《ちゝ》の気に入る様にするのは、何でも、国家の為《ため》とか、天下の為《ため》とか、景気の好《い》い事を、しかも結婚と両立しない様な事を、述《の》べて置けば済《す》むのであるが
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