。代助はそれを面白く聞いてゐた。然し腹の中では、寺尾の事を誰《だれ》も賞《ほ》めないので、其対抗運動として、自分の方では他《ひと》を貶《けな》すんだらうと思つた。ちと、左様《さう》云ふ意見を発表したら好《い》いぢやないかと勧めると、左様《さう》は行《い》かないよと笑つてゐる。何故《なぜ》と聞き返しても答へない。しばらくして、そりや君の様に気楽に暮《くら》せる身分なら随分云つて見せるが――何《なに》しろ食《く》ふんだからね。どうせ真面目《まじめ》な商買ぢやないさ。と云つた。代助は、夫《それ》で結構だ、確《しつ》かり遣《や》り玉へと奨励した。すると寺尾は、いや些《ちつ》とも結構ぢやない。どうかして、真面目《まじめ》になりたいと思つてゐる。どうだ、君ちつと金《かね》を借《か》して僕を真面目《まじめ》にする了見はないかと聞《き》いた。いや、君が今の様な事をして、夫《それ》で真面目《まじめ》だと思ふ様になつたら、其時借してやらうと調戯《からか》つて、代助は表へ出《で》た。
本郷の通り迄|来《き》たが惓怠《アンニユイ》の感は依然として故《もと》の通りである。何処《どこ》をどう歩《ある》いても物足
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