人《ひとり》でゐるか、或は妾《めかけ》を置いて暮《くら》すか、或は芸者と関係をつけるか、代助自身にも明瞭な計画は丸でなかつた。只《たゞ》、今《いま》の彼は結婚といふものに対して、他の独身者の様に、あまり興味を持《も》てなかつた事は慥《たしか》である。是は、彼の性情が、一図に物に向つて集注し得ないのと、彼の頭《あたま》が普通以上に鋭《する》どくつて、しかも其|鋭《するど》さが、日本現代の社会状況のために、幻像《イリユージヨン》打破の方面に向《むか》つて、今日迄多く費やされたのと、それから最後には、比較的金銭に不自由がないので、ある種類の女を大分多く知つてゐるのとに帰着するのである。が代助は其所《そこ》迄解剖して考へる必要は認めてゐない。たゞ結婚に興味がないと云ふ、自己に明《あきら》かな事実を握《にぎ》つて、それに応じて未来を自然に延《の》ばして行く気でゐる。だから、結婚を必要事件と、初手から断定して、何時《いつ》か之を成立させ様と喘《あせ》る努力を、不自然であり、不合理であり、且つあまりに俗臭を帯びたものと解釈した。
代助は固より斯《こ》んな哲理《フヒロソフヒー》を嫂《あによめ》に向つ
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