は気遣《きづか》つた。けれども夫《それ》が為《た》めに、大いに働《はた》らいて、自から金を取らねばならぬといふ決心は決して起し得なかつた。代助は此事件を夫程重くは見てゐなかつたのである。

       七の六

 梅子は、此機会を利用して、色々の方面から代助を刺激しやうと力めた。所が代助には梅子の腹《はら》がよく解《わか》つてゐた。解《わか》れば解《わか》る程激する気にならなかつた。そのうち話題は金《かね》を離れて、再び結婚に戻《もど》つて来《き》た。代助は最近の候補者に就て、此間《このあひだ》から親爺《おやぢ》に二度程|悩《なや》まされてゐる。親爺《おやぢ》の論理は何時《いつ》聞《き》いても昔し風に甚だ義理|堅《かた》いものであつたが、其代り今度は左程権柄づくでもなかつた。自分の命《いのち》の親《おや》に当《あた》る人《ひと》の血統を受けたものと縁組をするのは結構な事であるから、貰《もら》つて呉れと云ふんである。さうすれば幾分か恩が返《かへ》せると云ふんである。要するに代助から見ると、何が結構なのか、何が恩返しに当るのか、丸で筋の立《た》たない主張であつた。尤も候補者自身に就ては、
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