程適切な異見を自分に向つて加へ得やうとは思はなかつた。実は金《かね》の工面を思ひ立つてから、自分でも此弱点を冥々の裡《うち》に感じてゐたのである。
「全く車屋ですね。だから姉《ねえ》さんに頼《たの》むんです」
「仕方がないのね、貴方《あなた》は。あんまり、偉過《えらすぎ》て。一人《ひとり》で御|金《かね》を御|取《と》んなさいな。本当の車屋なら貸《か》して上げない事もないけれども、貴方《あなた》には厭《いや》よ。だつて余《あんま》りぢやありませんか。月々《つき/″\》兄《にい》さんや御父《おとう》さんの厄介になつた上《うへ》に、人《ひと》の分《ぶん》迄自分に引受けて、貸してやらうつて云ふんだから。誰《だれ》も出《だ》し度《たく》はないぢやありませんか」
 梅子の云ふ所は実に尤もである。然し代助は此|尤《もつとも》を通り越して、気が付《つ》かずにゐた。振り返つて見ると、後《うしろ》の方に姉《あね》と兄《あに》と父《ちゝ》がかたまつてゐた。自分も後戻《あともど》りをして、世間並《せけんなみ》にならなければならないと感じた。家《うち》を出《で》る時、嫂《あによめ》から無心を断わられるだらうと
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