張つたつて、貴方《あなた》に敵《かな》ひつこないのは無論ですもの。私《わたし》と貴方《あなた》とは今迄|通《どほ》りの関係で、御互ひに満足なんだから、文句はありやしません。そりや夫《それ》で好《い》いとして、貴方《あなた》は御父《おとう》さんも馬鹿にして入らつしやるのね」
 代助は嫂《あによめ》の態度の真卒な所が気に入つた。それで、
「えゝ、少しは馬鹿にしてゐます」と答へた。すると梅子は左《さ》も愉快さうにハヽヽヽと笑つた。さうして云つた。
「兄《にい》さんも馬鹿にして入らつしやる」
「兄《にい》さんですか。兄《にい》さんは大いに尊敬してゐる」
「嘘《うそ》を仰《おつ》しやい。序《ついで》だから、みんな打《ぶ》ち散《ま》けて御|仕舞《しまひ》なさい」
「そりや、或点《あるてん》では馬鹿にしない事もない」
「それ御|覧《らん》なさい。あなたは一家族|中《ぢう》悉く馬鹿にして入らつしやる」
「どうも恐れ入りました」
「そんな言訳《いひわけ》はどうでも好《い》いんですよ。貴方《あなた》から見れば、みんな馬鹿にされる資格があるんだから」
「もう、廃《よ》さうぢやありませんか。今日《けふ》は中中
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