助は無論|怒《おこ》つてはゐなかつた。たゞ姉弟《けうだい》から斯《か》ういふ質問を受けやうと予期してゐなかつた丈である。今更|返《かへ》す気《き》だの、貰《もら》う積りだのと布衍《ふえん》すればする程馬鹿になる許《ばかり》だから、甘《あま》んじて打撃を受けてゐた丈である。梅子は漸やく手に余る弟を取つて抑えた様な気がしたので、後《あと》が大変云ひ易《やす》かつた。――

       七の五

「代さん、あなたは不断《ふだん》から私《わたくし》を馬鹿にして御出《おいで》なさる。――いゝえ、厭味《いやみ》を云ふんぢやない、本当の事なんですもの、仕方がない。さうでせう」
「困《こま》りますね、左様《さう》真剣《しんけん》に詰問《きつもん》されちや」
「善《よ》ござんすよ。胡魔化《ごまくわ》さないでも。ちやんと分《わか》つてるんだから。だから正直に左様《さう》だと云つて御仕舞なさい。左様《さう》でないと、後《あと》が話《はな》せないから」
 代助は黙《だま》つてにや/\笑《わら》つてゐた。
「でせう。そら御覧なさい。けれども、それが当り前よ。ちつとも構《かま》やしません。いくら私《わたし》が威
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