1−7−82]ルキイルを雲《くも》に見立てた積で此図を注文したのである。彼は此|雲《くも》の峰だか、又巨大な女性だか、殆んど見分けの付《つ》かない、偉《い》な塊《かたまり》を脳中《のうちう》に髣髴《ほうふつ》して、ひそかに嬉《うれ》しがつてゐた。が偖出来|上《あが》つて、壁《かべ》の中《なか》へ嵌《は》め込んでみると、想像したよりは不味《まづ》かつた。梅子と共に部屋を出《で》た時《とき》は、此※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ルキイルは殆んど見えなかつた。紺青《こんじやう》の波は固より見えなかつた。たゞ白い泡《あは》の大きな塊《かたまり》が薄白《うすじろ》く見えた。
居間《ゐま》にはもう電燈が点《つ》いてゐた。代助は其所《そこ》で、梅子と共に晩食《ばんしよく》を済《す》ました。子供|二人《ふたり》も卓《たく》を共にした。誠太郎に兄《あに》の部室《へや》からマニラを一本|取《と》つて来《こ》さして、夫《それ》を吹《ふ》かしながら、雑談をした。やがて、小供《こども》は明日《あした》の下読《したよみ》をする時間だと云ふので、母《はゝ》から注意を受けて、自分の部屋《へや》へ引き取《と》つ
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