たので、後《あと》は差し向《むかひ》になつた。
代助は突然例の話《はなし》を持《も》ち出すのも、変なものだと思つて、関係のない所からそろ/\進行を始めた。先づ父《ちゝ》と兄《あに》が綱曳《つなつぴき》で車《くるま》を急《いそ》がして何所《どこ》へ行つたのだとか、此間《このあひだ》は兄《にい》さんに御馳走になつたとか、あなたは何故《なぜ》麻布の園遊会へ来《こ》なかつたのだとか、御父《おとう》さんの漢詩は大抵|法螺《ほら》だとか、色々《いろいろ》聞いたり答へたりして居《ゐ》るうちに、一つ新しい事実を発見した。それは外《ほか》でもない。父《ちゝ》と兄《あに》が、近来目に立《た》つ様に、忙《いそが》しさうに奔走し始めて、此四五日は碌々《ろく/\》寐《ね》るひまもない位だと云ふ報知である。全体何が始《はじま》つたんですと、代助は平気な顔《かほ》で聞いて見た。すると、嫂《あによめ》も普通の調子で、さうですね、何《なに》か始《はじま》つたんでせう。御父《おとう》さんも、兄《にい》さんも私《わたくし》には何《なん》にも仰《おつ》しやらないから、知《し》らないけれどもと答へて、代さんは、それよりか此間
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