》か互《たがひ》の傍《そば》を立退《たちの》いてゐたことを発見した。
所が今日《けふ》は妙である。酒《さけ》に親《した》しめば親《した》しむ程、平岡が昔《むかし》の調子を出《だ》して来《き》た。旨《うま》い局所へ酒が回《まは》つて、刻下《こくか》の経済や、目前の生活や、又それに伴ふ苦痛やら、不平やら、心の底の騒《さわ》がしさやらを全然|痲痺《まひ》[#「痲痺」は底本では「痳痺」]して仕舞つた様に見える。平岡の談話は一躍《いちやく》して高《たか》い平面に飛び上《あ》がつた。
「僕は失敗したさ。けれども失敗しても働《はた》らいてゐる。又是からも働《はた》らく積《つもり》だ。君は僕の失敗したのを見て笑つてゐる。――笑はないたつて、要するに笑つてると同じ事に帰着するんだから構はない。いゝか、君は笑つてゐる。笑つてゐるが、其君《そのきみ》は何も為《し》ないぢやないか。君は世の中《なか》を、有《あり》の儘《まゝ》で受け取る男だ。言葉を換えて云ふと、意志を発展させる事の出来ない男だらう。意志がないと云ふのは嘘《うそ》だ。人間だもの。其証拠には、始終物足りないに違《ちがひ》ない。僕は僕の意志を現実社
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