会に働《はたら》き掛《か》けて、其現実社会が、僕の意志の為《ため》に、幾分でも、僕の思ひ通りになつたと云ふ確証を握らなくつちや、生きてゐられないね。そこに僕と云ふものゝ存在の価値《かち》を認めるんだ。君はたゞ考へてゐる。考へてる丈だから、頭《あたま》の中《なか》の世界と、頭《あたま》の外《そと》の世界を別々《べつ/\》に建立《こんりう》して生きてゐる。此大不調和を忍んでゐる所が、既に無形の大失敗ぢやないか。何故《なぜ》と云つて見給へ。僕のは其不調和を外《そと》へ出《だ》した迄で、君のは内に押し込んで置く丈の話だから、外面《ぐわいめん》に押し掛けた丈、僕の方が本当の失敗の度《ど》は少《すく》ないかも知れない。でも僕は君に笑はれてゐる。さうして僕は君を笑ふ事が出来ない。いや笑ひたいんだが、世間から見ると、笑つちや不可《いけ》ないんだらう」
「何《なに》笑《わら》つても構はない。君が僕を笑ふ前に、僕は既に自分を笑つてゐるんだから」
「そりや、嘘《うそ》だ。ねえ三千代《みちよ》」
 三千代《みちよ》は先刻《さつき》から黙《だま》つて坐《すは》つてゐたが、夫《おつと》から不意に相談を受けた時、に
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