て兄《あに》との交渉は、まあ初対面の様なものである。
代助から見ると、誠吾は蔓《つる》のない薬鑵《やくわん》と同じことで、何処《どこ》から手を出して好《い》いか分《わか》らない。然しそこが代助には興味があつた。
代助は世間話《せけんばなし》の体《てい》にして、平岡夫婦の経歴をそろ/\話《はな》し始めた。誠吾は面倒な顔色もせず、へえ/\と拍子を取る様に、飲みながら、聞いてゐる。段々進んで三千代が金《かね》を借《か》りに来《き》た一段になつても、矢っ張りへえ/\と合槌を打つてゐる丈である。代助は、仕方なしに、
「で、私《わたし》も気の毒だから、何《ど》うにか心配して見様つて受合つたんですがね」と云つた。
「へえ。左様《さう》かい」
「何《ど》うでせう」
「御前《おまい》金《かね》が出来《でき》るのかい」
「私《わたし》や一文も出来《でき》やしません。借《か》りるんです」
「誰《だれ》から」
代助は始めから此所《こゝ》へ落《おと》す積《つもり》だつたんだから、判然《はつきり》した調子で、
「貴方《あなた》から借りて置《お》かうと思ふんです」と云つて、改めて誠吾の顔《かほ》を見た。兄《あ
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