ひ》にも賛成した。父《ちゝ》と嫂《あによめ》は黙《だま》つてゐた。そこで代助は、あの大人《おとな》しさは、羞恥《はにか》む性質《せいしつ》の大人《おとなし》さだから、ミスの教育とは独立に、日本の男女の社交的関係から来たものだらうと説明した。父《ちゝ》はそれも左《さ》うだと云つた。梅子は令嬢の教育地が京都だから、あゝなんぢやないかと推察した。兄《あに》は東京だつて、御前《おまへ》見《み》た様なの許《ばかり》はゐないと云つた。此時|父《ちゝ》は厳正《げんせい》な顔《かほ》をして灰吹《はいふき》を叩《たゝ》いた。次《つぎ》に、容色《きりよう》だつて十人|並《なみ》より可《い》いぢやありませんかと梅子が云つた。是には父《ちゝ》も兄《あに》も異議はなかつた。代助も賛成の旨《むね》を告白した。四人は夫《それ》から高木の品評に移つた。温健の好人物と云ふ事で、其方《そのほう》はすぐ方付《かたづ》いて仕舞つた。不幸にして誰《だれ》も令嬢の父母を知らなかつた。けれども、物堅《ものがた》い地味な人《ひと》だと云ふ丈は、父《ちゝ》が三人《さんにん》の前で保証した。父《ちゝ》はそれを同県下の多額納税議員の某から確《たしか》めたのださうである。最後に、佐川家の財産に就ても話《はなし》が出《で》た。其《その》時父は、あゝ云ふのは、普通の実業家より基礎が確《しつか》りしてゐて安全だと云つた。
 令嬢の資格が略《ほゞ》定《さだ》まつた時、父《ちゝ》は代助に向つて、
「大した異存もないだらう」と尋ねた。其語調と云ひ、意味と云ひ、何《ど》うするかね位の程度ではなかつた。代助は、
「左様《さう》ですな」と矢っ張り煮《に》え切《き》らない答をした。父《ちゝ》はじつと代助を見てゐたが、段々《だん/\》皺《しわ》の多い額《ひたひ》を曇《くも》らした。兄《あに》は仕方なしに、
「まあ、もう少し善《よ》く考へて見るが可《い》い」と云つて、代助の為《ため》に余裕を付《つ》けて呉れた。

       十三の一

 四日程《よつかほど》してから、代助は又|父《ちゝ》の命令で、高木の出立《しつたつ》を新橋迄見送つた。其日《そのひ》は眠《ねむ》い所を無理に早く起《おこ》されて、寐足《ねた》らない頭《あたま》を風《かぜ》に吹《ふ》かした所為《せゐ》か、停車場に着《つ》く頃《ころ》、髪《かみ》の毛の中《なか》に風邪《かぜ》を引
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