で》た。
「はあ、左様《さう》ですか。上《あ》がるんですか」と茶壺《ちやつぼ》を放り出《だ》して門野も付《つ》いて来《き》た。二人《ふたり》で洋盃《コツプ》を探《さが》したが一寸《ちよつと》見付《みつ》からなかつた。婆さんはと聞くと、今御客さんの菓子を買ひに行つたといふ答であつた。
「菓子がなければ、早く買つて置《お》けば可《い》いのに」と代助は水道の栓《せん》を捩《ねぢ》つて湯呑に水を溢《あふ》らせながら云つた。
「つい、小母《をば》さんに、御客さんの呉《く》る事を云つて置かなかつたものですからな」と門野《かどの》は気の毒さうに頭《あたま》を掻《か》いた。
「ぢや、君が菓子を買《かひ》に行《い》けば可《い》いのに」と代助は勝手《かつて》を出《で》ながら、門野《かどの》に当《あた》つた。門野《かどの》はそれでも、まだ、返事をした。
「なに菓子の外《ほか》にも、まだ色々《いろ/\》買《かひ》物があるつて云ふもんですからな。足《あし》は悪《わる》し天気は好《よ》くないし、廃《よ》せば好《い》いんですのに」
 代助は振《ふ》り向きもせず、書斎へ戻《もど》つた。敷居《しきゐ》を跨いで、中《なか》へ這入るや否や三千代の顔《かほ》を見ると、三千代は先刻《さつき》代|助《すけ》の置《お》いて行《い》つた洋盃《コツプ》を膝の上《うへ》に両手で持つてゐた。其|洋盃《コツプ》の中《なか》には、代助が庭《には》へ空《あ》けたと同じ位に水《みづ》が這入《はい》つてゐた。代助は湯呑を持《も》つた儘《まゝ》、茫然として、三千代の前《まへ》に立《た》つた。
「何《ど》うしたんです」と聞《き》いた。三千代は例《いつも》の通り落ち付いた調子で、
「難有《ありがた》う。もう沢山。今あれを飲んだの。あんまり奇麗だつたから」と答へて、リリー、オフ、ゼ、※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]レーの漬《つ》けてある鉢《はち》を顧《かへり》みた。代助は此|大鉢《おほはち》の中《なか》に水を八分目《はちぶんめ》程|張《は》つて置いた。妻《つま》楊枝位な細《ほそ》い茎《くき》の薄青《うすあを》い色《いろ》が、水《みづ》の中《なか》に揃《そろ》つてゐる間《あひだ》から、陶器《やきもの》の模様が仄《ほの》かに浮《う》いて見えた。
「何故《なぜ》あんなものを飲んだんですか」と代助は呆《あき》れて聞《き》いた。
「だつて毒
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