きしまつて、本来の自分にたちかへつたやうな気分になつた。
古徃今来、幾多の人間が私とおなじ過失を繰り返し、おなじ苦悩憂悶にもがき、そしておなじ最後のもの[#「最後のもの」に傍点]に向つて急いだであらうか。
一切我今皆懺悔。
(後日、私の懺悔はホンモノでなかつたことを、さらにまた懺悔しなければならない私であつた)夕の勧[#「勧」に「マヽ」の注記]行随喜。
独慎、自分で自分を欺くな。
洗へ、洗へ、洗ひ落せ、…………垢、よごれ、乞食根性、卑屈、恥知らず、すがりごゝろ、…………洗ひ落せ。
夜が更けて沈んでも睡れなかつた。

 七月七日[#「七月七日」に二重傍線] 曇。

莫妄想。
暁の鐘の声が――それは音でなくて、声である――が身心に沁みとほる。
永平本山では、ヱレベーターは出来ても、また、水流し式の便所が出来ても、行持は綿々密々でなければならない、それが曹洞禅の本領である。
黙々として、粛々として、一切が調節された幸福[#「調節された幸福」に傍点]でなければならない。
野菜料理の味。
独り遊ぶ[#「独り遊ぶ」に傍点]、――三日間、私はアルコールなしに、ニコチンなしに、無言行をつゞけた。
これ
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