い、酒、酒、肴、肴と御馳走責めにされた、奥さんの手料理はおいしい。
夜はSさん来訪、書いたり話したり笑つたり。
[#ここから2字下げ]
・火燵まで入れてもろうて猫がおさきに
   (愚郎居)
・雪あかりの日あかりの池がある畑がある
[#ここで字下げ終わり]

 三月十日[#「三月十日」に二重傍線]

比古君の厄介になる。
比古君は私にピタリと触れてくれる、うれしかつた。
奥さんに連れられて、大阪劇場で、松竹レヴユー見物、まことに春のおどり!
夜は新町でのんきに遊ぶ。
[#ここから2字下げ]
・こどもに雪をたべさしたりしてつゝましいくらし
・きたない池に枯葦の葉も大阪がちかい
・春風の旗がはた/\特別興行といふ
・うらはぬかるみの、女房ぶりの、大根やにんじん
・雲のゆききのさびしくもあるか
[#ここで字下げ終わり]

 三月十一日[#「三月十一日」に二重傍線]

ほつかり覚める。
新町のお茶屋の二階、柄にもない。
比古君が方々を連れ歩いてくれる。
汁といふ店で汁を食べた、さすがに大阪だと思つた。
夜はまた新町へ。

 三月十二日[#「三月十二日」に二重傍線] 曇。

ぶらつくうちに日が暮
前へ 次へ
全80ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング