がたさ。
寝ること/\忘れること/\。
六月廿六日[#「六月廿六日」に二重傍線] 雨。
早い朝湯にはいつてから日和山の展望をたのしむ、美しい港風景である、芭蕉句碑もあつた。
十時出発、汽車で平泉へ、沿道の眺望はよかつた、旭山……一関。……
平泉。――
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毛越寺旧蹟、まことに滅びるものは美しい!
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中尊寺、金色堂。
あまりに現代色が光つてゐる!
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何だか不快を感じて、平泉を後に匆々汽車に乗つた。
九時仙台着、やうやく青衣子居を探しあてゝ厄介になる。
青衣子君の苦脳[#「脳」に「マヽ」の注記]と平静とは尊くも悲しい、省みて私は私を恥ぢた。
六月廿七日[#「六月廿七日」に二重傍線] 晴。
――妙な夢を見た。
青衣子が方々を案内して下さる、しづかな日だつた。
政岡の墓、伽羅樹一もと。
躑躅ヶ岡、枝垂桜の老木並木。
乳房の木、萩。
宮城野をよこぎる、蝶々。
Sさんから芳醇一壜頂戴。
夕方、K君わざ/\来訪。
熱い湯からあがつてうまい酒をよばれる。
主人心づくしの鯉の手料理!
手紙二つ書く、――澄太君へ、緑平老へ、――
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